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NATIONAL INSTITUTE OF GENETICS
Mammalian Development Laboratory

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マウス生殖細胞雄化必須なRNA結合蛋白Nanos2の標的RNAを同定
2016-04-13
RNA結合タンパク質Nanos2は、生殖細胞がオスとしての性質を獲得する上で鍵となる必須の役割を果たしています。これまでの研究から、Nanos2-DND1複合体がmRNAに結合してそのmRNAを分解することはわかっていました。しかし、Nanos2がどの遺伝子のmRNAを分解して生殖細胞のオス分化に関わるのか長いあいだ謎でした。今回、その標的RNA(DazlmRNA)を同定しました。
この成果はNature communicationsに掲載されています。論文タイトルは、
「Dazl is a target RNA suppressed by mammalian NANOS2 in sexually differentiating male germ cells」
筆頭著者は助教の加藤譲さんで、かつて総研大(広海研)でハエを研究していた勝木健雄さんとの共同研究になります。
これまで、当研究室では、Nanos2がDND1と一緒に標的RNAを選択的に結合し、分解することで生殖細胞の雄化を制御していることを明らかにしてきました。しかし、Nanos2と結合するRNAは1000種類にも及ぶため、どのRNAが機能的に重要なRNAなのかは不明でした。実は、今回の標的RNA発見のきっかけになったのはあるトランスジェニックマウスです。数年前にDazlというやはり生殖細胞に特異的なRNA結合蛋白質にFlag-tagをつけるためにBAC-TGを作製したところ、すべての雄が不妊になったのです。その精巣から完全に精子がいなくなっていました。その原因がBAC-TGを作製した際に使用した外因性の3'-UTRであることに気付いたのです。すなわち、Dazlの3'-UTRがないDazl-mRNAを持つことでマウスが不妊になったのです。Nanos2は標的mRNAの3'-UTRに結合し分解を誘導すると考えられています。すなわち、Nanos2が結合できないために蛋白質が安定化しDazlの過剰発現マウスになっていたのです。そこで今度は条件的に3'UTRを欠損できるBAC-TGを新たに作成し、Nanos2との関係を徹底的に解析しました。
トランスジェニックマウス作製に使用したBAC-TGの遺伝子。Dazlの3'-UTRがFrt配列にはさまれているため、FLP発現マウスと交配すると3'-UTRが欠損する。
3'UTRを欠損したマウスの精巣は矮小化し、生殖細胞はほとんど消滅していた。
このBAC-TGはNanos2は正常に発現していますが、Dazlの3'-UTRがないとNanoso2が結合できないために、RNAの分解が起こらず、結果としてDazlタンパク質の発現量が増えることが分かりました。ではなぜDazlが増えると生殖細胞に異常がおこるのでしょうか?

DazlはNanos2と同じくRNAに結合するタンパク質ですが、その機能はNanos2とは逆に、結合するRNAの翻訳を促進することが知られていました。そこで、我々はNanos2タンパク質とDazlタンパク質は互いに拮抗的に働く(Nanos2タンパク質とDazlタンパク質は互いの働きを邪魔する)のではないかと考え、様々な検証をおこない、このアイデアを支持する多くの実験結果を得たのです。
Nanos2によるDazl mRNAの抑制が起こらないと、単にDazlタンパク質が増えるだけでなく、増えたDazlタンパク質によってNanos2の働きが弱められてしまうのです。逆に言うと、正常なオス分化においてNanos2はDazlタンパク質の働きを邪魔していると考えられるのです。
これらの結果から、正常な生殖細胞のオス分化においてNanos2は、(1) Dazl mRNAの抑制と、(2) Dazlタンパク質に対する拮抗作用、の二重の機構により、Dazlの働きを抑えていると考えたのです。
つまり、Nanos2とDazlのバランスが生殖細胞のオス化に重要だったのです。



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